大判例

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東京高等裁判所 昭和62年(行ケ)139号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の本件審決を取り消すべき事由について判断する。

1 請求の原因四1について

第一引用例のコーナー成形品がポリスチレンなどのプラスチツク材料で押出成形されることを最も有効な方法とするものであること、第一引用例のコーナー成形品が本件考案のコーナーパツドに相当すること、本件考案出願当時ABS樹脂が当業技術者にとつて周知の技術的事項になつていた耐衝撃性ポリスチレン樹脂の一種であつたことは、いずれも原告の自認するところである。右事実によれば、第一引用例のコーナー成形品の成形材料である「ポリスチレンなどのプラスチツク材料」の中に右周知のABS樹脂が含まれるとみるのが相当である。原告は、第一引用例のものは硬く脆い樹脂であるポリスチレンを使用しているのであつて、「弾力性に基づく復元力」を利用しようとする技術思想はないので、ABS樹脂は第一引用例の「ポリスチレン樹脂などのプラスチツク材料」には含まれない旨主張する。しかし、成立に争いのない甲第四号証によれば、第一引用例には、「本発明のコーナー成形品の少なくとも外側シエル10は、単一部品構造であるが故に、それ以外の方法では収縮または他の原因のために分断し易い留接ぎが存する筈のコーナー部分23においても分断することはないであろう。前記壁繰形材の切り目部21内に配置される舌部20のインターロツク性のために、前記コーナー成形品の何処にも釘打ちが不要である。このインターロツク性はまた、シュー繰形材14を壁繰形材13へしつかりと引き付けて、収縮、反り、又は釘打ち部の損傷のための継目24の分離を防ぐのである。保持圧力がリブ止め15に対して縦方向に加えられ、よつて壁コーナー25へぴつたりと正確にフイツトするように、前記壁、シュー繰形材を正確な長さで切り揃えれば最良の結果が得られるであろうが、しかしそのような切断手段も必ずしも必要ではない。」(三欄一八行ないし三三行。訳文八頁二行ないし一六行参照)と記載されていることが認められる。右記載によれば、第一引用例のコーナー成形品は、その弾力性に基づく復元力を利用していることが認められるから、前記原告の、第一引用例のものは弾力性に基づく復元力を利用しようとする技術思想はない旨の主張は採用できず、したがつてまた、第一引用例の「ポリスチレン樹脂などのプラスチツク材料」の中にABS樹脂は含まれない旨の主張は採用できない。

ところで、本件考案のコーナーパツドは、適宜な弾性を有する合成樹脂を用いて成形されたものであること、具体的にはポリエチレンやABS樹脂等の合成樹脂を使用することは、いずれも原告の自認するところである。そうすると、本件考案のコーナーパツドの成形材料と第一引用例のコーナー成形品の成形材料とはABS樹脂を用いる点で一致するのであるから、第一引用例のコーナー成形品は、本件考案のコーナーパツドと同様「適宜な弾性を有する合成樹脂を用いて成形されたもの」と認めることができ、同旨の本件審決の認定判断に誤りはなく、原告の請求原因四1の主張は採用できない。

2 同四2について

前掲甲第四号証によれば、第一引用例には、コーナー成形品について、「10は角度をなして配設された腕部11、12からなる外側シエルを示している。これらの腕部は、一般に互いに直角を成して伸びており、またそれらの平面は直角を成している。それぞれの腕部分は、接合すべき化粧繰形の輪郭に適合すべく繰形に作られている。繰形材は、壁部材13と、四分の一円弧状床部材14とからなる。コーナー成形品の外側シエル10は、これらの部材の両方の上に被合している。」(二欄四一行ないし四九行。訳文五頁一五行ないし六頁二行参照)、「本発明のコーナー成形品のシエル10は、化粧ランナー材に当接するよりも、寧ろ重なり合うが故に、必然的にそのシエルの厚さに等しい稜段部27が設けられることになる。」(三欄四三行ないし四六行。訳文九頁七行ないし一〇行参照)と記載されていることが認められる。右事実及び前掲甲第四号証の図面並びに前記1における認定判断を総合すると、第一引用例には、「コーナー成形品は適宜な弾性を有する合成樹脂を用いて成形されたものであつて左辺と右辺とから成るものであり、その裏面はランナー繰形材の凹凸模様とほぼ同一の形状であつて、ランナー繰形材の突き合わせ部に重ねてこれを押えているもの」が記載されていると認めることができる。そして、第一引用例の「繰形材」、「コーナー成形品」がそれぞれ本件考案の「天井廻り椽」、「コーナーパツド」に相当することは原告の自認するところであるから、第一引用例には、「コーナーパツドは適宜な弾性を有する合成樹脂を用いて成形されたものであつて、左辺と右辺とから成るものであり、その裏面は天井廻り椽の突き合わせ部に重ねてこれを押えているもの」が開示されていると認められ、したがつて、コーナーパツド(コーナー成形品)の構成において本件考案と第一引用例のものの間に格別の相違はない(なお、当事者間に争いのない本件考案の要旨中の「廻り椽の伸縮による突き合わせの間隙の変化を吸収する」との部分は、コーナーパツドの作用を記載したものであることが明らかであるところ、第一引用例のものも本件考案のコーナーパツドと構成が同じであるから右と同じ作用を有するものと認められる。)から、同旨の本件審決の認定判断に誤りは認められない。

原告は、第一引用例に示されているコーナー成形品はその裏面にリブ部材及び舌部材が存在することが必須要件であるのに、本件審決はこの点を看過し、その結果、本件考案のコーナーパツドと第一引用例のコーナー成形品との間に格別の相違は認められないとしたものであつて、右認定判断は誤りである旨主張する。

前掲甲第四号証によれば、第一引用例のコーナー成形品がその裏面にリブ部材及び舌部材が存在することを必須要件としていることは原告主張のとおりであることが認められる。しかしながら、前記当事者間に争いのない本件考案の要旨によれば、本件考案のコーナーパツドの構成について、本件考案は、「コーナーパツドは適宜な弾性を有する合成樹脂を用いて成形されたものであつて、左辺と右辺とから成るものであり、その裏面は天井廻り椽の凹凸模様とほゞ同一の形状であつて、天井廻り椽の突き合わせ部に重ねてこれを押え」と規定しているのみであつて右のほかに構成の限定はないことが認められるから、第一引用例のコーナー成形品が前叙のとおり本件考案のコーナーパツドの右構成と同じ構成を有していると認められる以上、両者の構成に格別の相違はないとするのはむしろ当然である。裏面にリブ部材及び舌部材が存在することを必須要件としている第一引用例のコーナー成形品の場合も、本件考案のコーナーパツドに含まれるといえるにすぎない。したがつて、原告の右主張は採用することができない。

以上のとおりであるから、請求原因四2の主張もまた採用することができない。

三 よつて、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないのでこれを棄却することとする。

〔編注1〕本件考案の要旨は左のとおりである。

天井廻り椽は発泡スチロール樹脂等の合成樹脂を用いて長手方向に連続する凹凸模様を現出させて成形されたものであり、コーナーパツドは適宜な弾性を有する合成樹脂を用いて成形されたものであつて、左辺と右辺とから成るものであり、その裏面は上記天井廻り椽の凹凸模様とほぼ同一の形状であつて、天井廻り椽の突き合わせ部に重ねてこれを押え廻り椽の伸縮による突き合わせ部の間隙の変化を吸収するものであることを特徴とする天井廻り椽及びコーナーパツドの組み合わせ構造。

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